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読書2010

三国一の読書野郎※221

そんなに怖くないし

 「怪談」を好む人は多く、また都市伝説を好む人も多いので、書店に行くと「百物語」だとか、「本当に怖いなんたらかんたら」といった本がたくさんある。私も、嫌いな方ではないので、たまにそんな本に目を通すが、「本当に怖い」本に出会ったことは、まだ、ない。「実録怪談集」と銘打たれた、「百物語 第十夜」なるものを読んでみたがこれもまた、然り。

Book 百物語 第10夜―実録怪談集 (ハルキ・ホラー文庫 ひ 2-10)

著者:平谷 美樹,岡本 美月
販売元:角川春樹事務所
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<双子山評定>要するに、怪異現象、超常現象を信じる、信じないの問題ではなく、「語り」の問題なのではないか。怪談はもはや定型化しており、その文法内でしか語られていない。だから、凡庸化してしまっているのだ。

さらには、現実の方がよほど恐ろしいのだ。「誰でよかった」殺人者が潜む現代社会の闇の方が、怪異が隠れる闇より深くなってしまっている現状があるのだ。

だから、怪談本を好むというのは、一種の現実逃避なのかもしれぬ。

⇒☆☆

読む快楽2010※98

読むマンガ

 新堂冬樹「純愛不倫」を、病院の待ち時間で読みとおす。1時間弱で読み切れる小説って、いったい・・・。

不倫純愛 (新潮文庫) Book 不倫純愛 (新潮文庫)

著者:新堂 冬樹
販売元:新潮社
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 めちゃくちゃな小説。文芸雑誌の編集長が、売れっ子作家の美人秘書と不倫関係になる。売れっ子作家は編集長の妻を犯す。

 活字で読むポルノマンガだな。

 新堂、昔はもっとどろどろの、くどい小説を書いていて、結構楽しめはしたのだがね。これは、だめでしょう。何が言いたいんだか、わからない。

 新潮社もこのような小説を文庫化するのは、あまりに大衆に媚を売っているのではないかとさえ思ってしまう。まあ、いいけどよ。

読む快楽2010※97

勉強になります

 イギリス経済・産業史の泰斗・川北稔の「イギリス近代史講義」を読む。これも、新書版ながら中味は濃い。勉強になりました。

イギリス近代史講義 (講談社現代新書) Book イギリス近代史講義 (講談社現代新書)

著者:川北 稔
販売元:講談社
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 イギリスは核家族化が早くから進んだ社会であり、それゆえ、「救貧」の思想が発達したとか、産業革命がイギリスから始まったのは確かではあるが、その後はアメリカなどに工業においては追い抜かれ、むしろ金融資本主義の発達によって隆盛を迎えたなどなど、目からウロコの講義である。

 基本となっているのはウォーラーステインの世界システム論。国家・地域は単独では成り立たず、世界的なシステムの中に組み込まれながら歴史的に発展していくというような考え方だ。植民地経営がイギリス社会に与えた影響など、示唆に富む論理がここから帰結される。

 そのイギリス没落論⇒陽はまた昇る論を、現代日本にいかに適合させていくか。歴史を学ぶ意義とは、まさにそこにあるのだ。

読む快楽2010※96

しゃれてますよね

 村上春樹の音楽エッセー「村上ソングス」を通読。

村上ソングズ (村上春樹翻訳ライブラリー) Book 村上ソングズ (村上春樹翻訳ライブラリー)

著者:村上 春樹
販売元:中央公論新社
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 と、いっても、ものの1時間半もあれば通読できるけどね。村上春樹の音楽エッセーは、軽いタッチながらも、読ませる。

 取り上げている音楽はジャズが多いのだが、ドアーズやビーチボーイズも。原詩と、その村上春樹訳も載っていて、英語のお勉強にもなります。

 何より、和田誠のイラストがしゃれてます。

 こういうエッセーを書きたい、こういうしゃれた本を造りたい。そういう思いにさせる一冊です。

読む快楽2010※95

コンパクトな良い本です

 北大医学部の浅香正博教授が書いた中公新書「胃の病気とピロリ菌」は面白い。胃の病気に、ピロリ菌が深くかかわっていることが、最新のデータから明らかにされている。新書というコンパクトサイズながら、中身はたっぷりである。

胃の病気とピロリ菌―胃がんを防ぐために (中公新書) Book 胃の病気とピロリ菌―胃がんを防ぐために (中公新書)

著者:浅香 正博
販売元:中央公論新社
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 胃がんは東アジアの風土病ともいえるそうだ。東アジアのピロリ菌は毒性が強いのである。除菌により、胃がんによる死者は劇的に抑えられる。その具体的施策も盛り込まれ、内容に厚みを与えている。胃痛の人、必読の一冊である。

読む快楽2010※94

愉しいミステリー

 伊坂幸太郎「オー!ファーザー」は何とも愉しいミステリーで、この作者の本領というか、本来備えもった明るさを前面に出した作品であると思う。

オー!ファーザー Book オー!ファーザー

著者:伊坂 幸太郎
販売元:新潮社
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 主人公である高校生には父親が4人いる。それぞれ、性格も考え方も異なる4人の父親に囲まれて暮らす主人公の周囲で起きる事件の謎を解いていく仕掛けである。設定的には映画「フォーメンズ・アンド・ベイビー」なのかな。

 父親が複数いる、という設定がだんだん、読み進めていくうちに不自然でなくなっていくから、この作家はうまいと思うのだよ。河北新報などに連載され、中高生の読者も多かったというから、まあ、それほどどぎつい内容にはできないのだが、子供にも受けるミステリーを書くということもまた、難しいわけでね。

読む快楽2010※93

歴史を学ぶということ

 津野田興一「世界史読書案内」を読む。

世界史読書案内 (岩波ジュニア新書) Book 世界史読書案内 (岩波ジュニア新書)

著者:津野田 興一
販売元:岩波書店
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 著者は都立高校の世界史教師。丸暗記するだけの科目としての歴史ではなく、<本当の世界史>を学ぶためにさまざまなジャンルの書物を紹介する。

 それは決して、高校生にとってやさしい書物ではない。しかし、高校時代は多少、「背伸び」をすることが肝心なのだと著者はいう。難しいものに、とにかく、しがみつく。そして、自分の頭で考える練習をするのだ。

 文中にもあるが、歴史を学ぶことは、ひいては自分を知ることになるのだ。この言葉の意味は重いぞ。高校生向けではあるが、なかなかの一冊である。

読む快楽2010※92

満州の幻

 浅田次郎「マンチュリアン・リポート」を読了。清朝末期から中華民国成立、そして満州事変にいたる著者渾身のシリーズの最新作である。中国に対する、著者の愛情にじむ作品であると思う。

マンチュリアン・リポート (100周年書き下ろし) Book マンチュリアン・リポート (100周年書き下ろし)

著者:浅田 次郎
販売元:講談社
発売日:2010/09/17
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読む快楽2010※91

あまりも過剰な男汁

 北方謙三の「抱影」を読む。ハードボイルド小説なんだろうが、過剰だね、男汁が。過剰すぎて古めかしささえ、漂ってしまう。

抱影 (100周年書き下ろし) Book 抱影 (100周年書き下ろし)

著者:北方 謙三
販売元:講談社
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読む快楽2010※90

ディーヴァー節は健在です

 ジェフリー・ディーヴァーの最新作「ロードサイド・クロス」を読む。どんでん返しがバンバン続くディーヴァー節は健在です。

ロードサイド・クロス Book ロードサイド・クロス

著者:ジェフリー・ディーヴァー
販売元:文藝春秋
Amazon.co.jpで詳細を確認する

 本作はNYの肢体不自由な科学捜査官、リンカーン・ライムシリーズではなく、カリフォルニア州捜査局の捜査官で尋問の天才、キャサリン・ダンスがヒロインである。彼女は「人間嘘発見器」という異称を持つ。人のしぐさ、身振りで、欺瞞とうそを見破ることができるのである。

 陰湿なネットいじめにあった少年が、そのブログに投稿した少女たちを襲う事件が起きる。少年はやがて姿を消すが、その後、事件はエスカレートし殺人も起きる。少年の行方は? そして、事件の真相は?

 二重、三重の仕掛けがあります。そして何より、このネット社会で生きることの恐ろしさがじわじわと滲んでくる作品になっています。そう、こうやって、いま、ここにあるブログがテーマなんですから。

 根拠も問わずに書き散らす文言。ブログだから赦される? そんなことはないでしょう。私も自戒したい。それだけでは足りないが、どうすればよいのか。

 私はミステリなんか、だまされるために読んでいると思っている。だから、ディーヴァー節は大好きなんですが、「だますためにだましているだけ」という批判もあるようですね。

⇒☆☆☆★。でも、どちらかといえば、リンカーン・ライムシリーズの方がすっきり読めますね。

 

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