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読書2009

本を読む日々2009※12月まとめ

このほか12月はこんな本を読みました

①半藤一利ほか「司馬遼太郎 リーダーの条件」

司馬遼太郎 リーダーの条件 (文春新書) Book 司馬遼太郎 リーダーの条件 (文春新書)

著者:磯田 道史,半藤 一利,鴨下 信一他
販売元:文藝春秋
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「坂の上の雲」ブームに乗り、司馬遼太郎の再評価が進む。この人材払底の時代、司馬の史観は確かに首肯すべきもの多し。
⇒☆☆☆★

②吉川潮「戦後落語史」

戦後落語史 (新潮新書) Book 戦後落語史 (新潮新書)

著者:吉川 潮
販売元:新潮社
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立川談志を軸に語られる東京落語の通史である。「志ん朝派」の私としては少々、食い足りなさも感じるのだが、ダメな落語家に対しては舌鋒も鋭く書き込んでいるのでよしとしよう。それにしても四代目三木助の自殺は悲しい。
⇒☆☆☆★

③友里征耶「グルメの罠」

グルメの嘘 (新潮新書) Book グルメの嘘 (新潮新書)

著者:友里 征耶
販売元:新潮社
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ブログでもしつこく、ねちねちと、インチキグルメ批判を展開している著者である。自腹で飯を食い、批判するのだから、その行為の是非は問えまい。しかし、どこかできいたことがあるような話ばかりで少々、食い足りない。
⇒☆☆★

④関川夏央「『坂の上の雲』と日本人」

「坂の上の雲」と日本人 (文春文庫) Book 「坂の上の雲」と日本人 (文春文庫)

著者:関川 夏央
販売元:文藝春秋
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司馬遼太郎の周辺本を読むなら、ホンちゃん系統を読めばいいのにね。でも、この「坂の上の雲」論は丁寧です。でも。、危険だな。司馬遼太郎は、というか、日露戦争は。
⇒☆☆☆

⑤松本健一「司馬遼太郎を読む」

司馬遼太郎を読む (新潮文庫) Book 司馬遼太郎を読む (新潮文庫)

著者:松本 健一
販売元:新潮社
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晩年の司馬遼太郎と交流したという自慢話しか記憶に残らない珍しい一冊。この人の昔の砥ぎ荒まれた文章はいまや、見る影もないな。
⇒☆☆

本を読む日々2009※56

すごいです。ぶっ飛んでます。

 今年もずいぶんと押し迫った段階で、なかなかにすごい1冊に出会いましたよ。平山夢明「DINER(ダイナー)」です。

ダイナー Book ダイナー

著者:平山夢明
販売元:ポプラ社
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 暴力団の金を強奪しようとして失敗し、山中に埋められかけられたところを、何とか助かったオオバカナコ。プロの殺し屋が集う会員制ダイナーでウェイトレスをすることになる。そこを訪れる客たちは、邪悪であり、凶悪であり、常識の通用しない連中ばかりだが、みな心に深い傷を負ってもいた。オオバカナコはこの異常な世界を生き抜くことができるのか?

 2007年に「独白するユニバーサル横メルカトル」で国内ミステリ界を席巻した平山夢明の長編である。バイオレンスと猟奇風味、そこにグルメ志向も織り交ぜて、ぐちゃぐちゃのアンダーグラウンドが現れる。確実に読者を選んでしまう作品ではあるが、はまったら抜けられない。一気読み必至の力技である。

 入れ替わり立ち替わりやってくる殺し屋群像がユニーク。そんな彼らとの触れ合いの中で、最初は単なる「バカナコ」だったヒロインが成長していく過程も面白い。

 

本を読む日々2009※55

期待したのだが。それほどでも・・・。

 米澤穂信の「追想五断章」を読む。今年の「このミステリーがすごい!」では第4位、週刊文春のベスト10でも第4位。

追想五断章 Book 追想五断章

著者:米澤 穂信
販売元:集英社
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 古書店で働く青年が、若い女性から「亡くなった父が書いた5つの小説を探してください」と頼まれる。いずれも、結末が伏せられた、いわゆるリドル・ストーリーである。調査を続けるうち、22年前にアントワープで起きたある事件に青年は逢着するのであるが・・・。

 「このミス」などでは、伏線の張り方や技巧が評価されていたように記憶するが、それほどのものではない。この作家、もともとかなりのトリッキー志向であるから、従来の作風からはみ出したものではないのだ。

 行きつく事実がスケール感に欠けてなんだかなあ、と思ってしまうのだ。ずいぶんと勿体ぶってはいるがね。リドル・ストーリーも大したことない。

 まあ、バブル崩壊直後、1990年代初めのうらぶれた感じの描写はなかなかか。でも、そのあたりに時代設定した意図もよくわからないしなあ。

本を読む日々2009※番外編

今年も出ましたベスト10

 恒例の年間ミステリベスト10、今年も「週刊文春」「このミステリーがすごい!」の両メディアで発表となりました。

 国内ベスト3は「週刊文春」では①東野圭吾「新参者」②柳広司「ダブル・ジョーカー」③北村薫「鷺と雪」、「このミス」では①、②が「文春」と同じ。③綾辻行人「Another」

 海外ベスト3は「週刊文春」が①スティーグ・ラーソン「ミレニアム1~3」②ドン・ウィンズロウ「犬の力」③ジェフリー・ディーヴァー「ソウル・コレクター」。「このミス」では①「犬の力」②「ミレニアム1」③マイケル・シェイボン「ユダヤ警官同盟」でした。  それほど大きな違いはないようです。「ミレニアム」のシリーズをどのようにカウントするかが多少、問題だったようで。

このミステリーがすごい! 2010年版 Book このミステリーがすごい! 2010年版

販売元:宝島社
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 私の場合、「文春」の国内だとベスト10中4作品、海外だとベスト10中6作品を読破。「このミス」では国内はベスト10中4作品。海外ではベスト10中6作品とまったく同じ結果でした。まあ、こんなもんだろうな~。

 しかし、「ミレニアム」シリーズは未読。年末年始に読む本、これで決まりましたね。

本を読む日々2009※54

今年一番。歴史本の収穫

 歴史をどう教えるか。そんなことは、学校の先生に任せておけばよいと思った。じっさい、自分自身がどうでもできる問題でもないのだが、教えたくなるなあ。こういう、刺激的な本を読むと。加藤陽子「それでも、日本人は戦争を選んだ」だ。今年の書評欄でもかなり取り上げられていたが、確かに、収穫である。

それでも、日本人は「戦争」を選んだ Book それでも、日本人は「戦争」を選んだ

著者:加藤陽子
販売元:朝日出版社
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 加藤陽子は東大教授。専攻は日本近代現代史。日露戦争以降、満州事変、日中戦争あたりがエリアである。

 その教授が、神奈川県の栄光学園の生徒を相手に、日清戦争から太平洋戦争までの日本史を講義するのである。新進気鋭の学者と、打てば響くような反応がある高校生たち。本の中身以前に、そういう場面に立ち会いたかったという嫉妬でいっぱいだ。

 実にスリリングな本である。一種、ミステリーを読むに等しい。

 歴史とは何か? 「日本切腹、中国解釈論」とか、とにかく、非情な論理の中で流れていく時間の中では、日本の論理は通用するはずもなく、欧米のおもいの中に翻弄され、やがて、310万人の同胞の死を迎えることになる。

 教育とは、こういう講義を受けることであるし、それは保障されなければならないよなあ。とにかく、すごい本である。びっくりした。加藤陽子、恐るべしだ。

 この加藤教授の旦那が、駿台講師の野島博之さん。講談社現代新書から「謎解とき日本現代史」という1冊を出している。1998年10月ごろ、話を聞いた(もう10年以上前!)。「今の受験生って、ソ連って知りません。学生運動って、百姓一揆のイメージでとらえてますし」という言葉が印象に残る。今ではもう、どうなっているのだろうか?

 

本を読む日々2009※11月まとめ

そのほか、11月はこんな本を読みました。

①垣根涼介「借金取りの王子」

借金取りの王子―君たちに明日はない〈2〉 (新潮文庫) Book 借金取りの王子―君たちに明日はない〈2〉 (新潮文庫)

著者:垣根 涼介
販売元:新潮社
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⇒☆☆☆★。ドラマにもなりそうな魅力的な連作。この作家も才能がある

②川瀬泰雄「真実のビートルズ・サウンド」

真実のビートルズ・サウンド (学研新書) Book 真実のビートルズ・サウンド (学研新書)

著者:川瀬 泰雄
販売元:学習研究社
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⇒☆☆☆。音楽プロデューサーによるビートルズの楽曲分析。興味深いが細かすぎて、楽譜を読めない身には少々、つらい

③ピーター・レナード「震え」

震え (ランダムハウス講談社 レ) (ランダムハウス講談社文庫) Book 震え (ランダムハウス講談社 レ) (ランダムハウス講談社文庫)

著者:ピーター レナード
販売元:ランダムハウス講談社
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⇒☆☆★。著者はエルモア・レナードの息子だって。期待して読んだが期待はずれだった

④誉田哲也「武士道シックスティーン」

武士道シックスティーン Book 武士道シックスティーン

著者:誉田 哲也
販売元:文藝春秋
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⇒☆☆☆★。誉田にしては珍しい、人が死なない小説。痛快青春剣道少女群像

⑤誉田哲也「武士道セブンティーン」

武士道セブンティーン Book 武士道セブンティーン

著者:誉田 哲也
販売元:文藝春秋
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⇒☆☆☆。「シックスティーン」の続編。ちょっとパワーダウンか?面白いけど

本を読む日々2009※53

素っ裸にされる恐怖

 ジェフリー・ディーヴァーの最新作「ソウル・コレクター」のテーマはコンピューター社会だ。個人情報が管理され、ひとたび悪用されれば、個人が徹底的にその素性をはぎ取られていく恐怖を描いている。

ソウル・コレクター Book ソウル・コレクター

著者:ジェフリー・ディーヴァー
販売元:文藝春秋
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本を読む日々2009※番外編

今年のベストは?

 さて、年の瀬も近づいて参りました。今年のミステリーのベストテンは、どのようなものが入ってくるのでしょうか? 最近は私もカネも元気もないので、一時期ほど、ミステリを読めなくなりましたが・・・。

 ドン・ウィンスロウの「犬の力」は確実に入るでしょう。ここに予言しておきます。ジェフリー・ディーヴァーの「ソウル・コレクター」は微妙かな。コーマック・マッカシーの「ロード」は純文学過ぎるか?

 東野圭吾「新参者」のランクインも確実。

 みなさんも、予想を寄せてください。

レット・イット・ビー Music レット・イット・ビー

アーティスト:ザ・ビートルズ
販売元:EMIミュージックジャパン
発売日:2009/09/09
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本を読む日々2009※50

バカ映画をぶっ飛ばせ!!

 安易なリメークとテレビ局の介入で世界最低水準にある日本映画にダメ出しをする一冊が「バッド・ムービー・アミーゴスの日本映画最終戦争」だっ!

バッド・ムービー・アミーゴスの日本映画最終戦争!<邦画バブル死闘編>2007-2008年版 (映画秘宝COLLECTION 38) Book バッド・ムービー・アミーゴスの日本映画最終戦争!<邦画バブル死闘編>2007-2008年版 (映画秘宝COLLECTION 38)

著者:柳下 毅一郎,江戸木 純,クマちゃん
販売元:洋泉社
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 年間に公開される邦画は400本以上。しかし、その中で世界レベルに通用する作品は何本あるのか? 柳下毅一郎、江戸木純という「うるさ型」が対談形式で一本づつ、くさしていくのだから、面白くないわけがないのだ。

 批判のための批判ではない。「なぜ、こんな映画がつくられてしまうのか」を根本的な疑問として据えているから、批判としての構想力を持ちうるのである。

 対談中に<「少林少女」はつまらない映画、「ICHI」はひどい映画。「邪馬台国」はふざけた映画。「252」はバカが作った映画>とあった。笑った。

 この手の批判は新聞や普通の雑誌ではまず無理。テレビでも難しい。「映画秘宝」という映画専門誌のうりもの企画だったのだが、最近は休載しているようだ。

 でも、くだらない映画を「くだらない」ということは勇気がいることは確かではないかね?

⇒☆☆☆★。その批判の背後にあるバックグラウンド。そして映画への愛を知れ。

本を読む日々2009※49

さすがにうまい奥田英朗

 奥田英朗も新作が出ると思わず、買ってしまう作家のひとりである。新作「無理」もその期待に応えてくれる長編であった。作家の話術にすっかり、はまってしまうのであった。

無理 Book 無理

著者:奥田 英朗
販売元:文藝春秋
Amazon.co.jpで詳細を確認する

 おもな登場人物は5人。いずれも合併で誕生した地方都市「ゆめの」に住む。弱者を主張する身勝手な住民に嫌気が差しているケースワーカー、東京の大学に入って、この街から抜け出そうとしている女子高生、詐欺まがいのセールスをする元暴走族、スーパーの万引き防止保安員をしながら新興宗教にはまる孤独な中年女性、近く県議会にうってでるつもりの二世の市議会議員ーの5人である。

 この5人の日常が、1章ごとに繰り返されていくのだが、その日常がやがて、少し筒ではあるがきしんでくる。そして、無関係だった5人は最後にはひとつの場所に収束していくのである。パズルの最後のパーツがかちり、と音を立ててはまるようだ。

 地方の閉塞感を描いて秀逸でもある。疲弊した地方のどうしようもなさ。そこで生きるも、脱出を図るも、いずれにせよ辛いことだ。だからと言って都会で暮らすことが辛くないとも言えないのだが。

 もう少し「希望」もほしいのだが、元暴走族のたくましさや、女子高生の「幸運」に希望を見出すべきなのだろうな。いずれにせよ、奥田の得意な群像劇が、もっともうまいかたちで展開されている。お勧めです。

⇒☆☆☆☆。安定感が出てきました、奥田英朗。

 

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