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本を読む日々2014②

何の救いもない、空虚な

 髙村薫の「冷血 上下」を読み終える。何の救いもない小説だ。空虚な魂が移ろいゆく世界としての現在しか、そこには表出していない。

 ネットで知り合った2人の男が、行き当たりばったりに一家4人を惨殺する。そこには何の必然性もない。「マークスの山」以来の登場人物である合田刑事も出てくるのだが、捜査の妙などはなく、犯人はあっさり捕まる。問題は、なぜ、人を殺すことをしたかという動機の解明なのだが、そこに巨大な空虚が立ち現れるのだ。グレート・バーカンシー。

 タイトルからして、トルーマン・カポーティの「冷血」にインスパイアされているのだが、カポーティのころの「冷血」にはまだ、冷たいなりに血が通っていたのに、現代の冷血はもっと無機質な、無しかないような、巨大な虚無がある。

 嫌な時代だし、嫌な小説だ。これはミステリではない。時代の心象風景の描出だ。こんな時代に生きていたくはない。しかし、生きていくしかない。

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