まだまだ読むぞ2013⑪
室町期庶民の実態に迫る
いまの日本の原型は南北朝時代に築かれたという。歴史学者の奈良本辰也氏が唱えていたような気がする。塩見鮮一郎の「中世の貧民」は説経節を題材に、室町期の庶民生活に迫る1冊である。
<口上>説経節の名作『小栗判官』を題材に、餓鬼として甦り、土車で引かれる主人公の熊野への旅を改めて検証するとともに、貴族や高僧といった上流階級ではなく、庶民の目線から見た貧困、病、宗教、そして恋の道行き等の実態を描く。
<双子山の目>著者は作家で、被差別部落研究の著作も多い。帯に「すさまじい貧困と差別」とあったので、残酷な風景が並ぶと思ったのだが、それほどでもなかった。しかし、足の腱を切られて鳥を追う「人間案山子」や、人身売買の横行など、室町期の社会の実態はひしひしと伝わってきた。しかし、叙述が独特で、読みにくさも、これありであった。
双子山評定:☆☆★
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