三国一の落語野郎2012⑦
さすがだ談春、堂々の歳末ネタ
道新ホールにて、立川談春独演会を聞く。ことしの春から四季折々、かけてきた高座の大団円。面白い試みであった。春からつきあってきたので、感慨深い。
前座なしで、いきなり談春登場。5日に急逝した中村勘三郎の思い出をマクラにしながら、「夢金」に入る。
描写のうまさに唸った。浪人と商家の娘を乗せ、船頭が漕ぐ小舟が隅田川に入るあたり。真冬の夜、雪がしんしんと降っている。真っ暗な空から落ちてくる虫のような雪、雪、雪。一瞬、その情景が目に浮かんだのである。
この噺は凄惨さと、滑稽さというかばからしさが同居した不思議な構造である。談春、そのコントラストを際立たせ、愉しみながらやっていたように思う。
二席目は「芝浜」である。一席目のマクラの段階で「あとで『芝浜』やるから」と言うのを聞いたとき、何となく、嫌な感じがした。札幌の客は、年末に「芝浜」をかけておけばいいや、と舐めた考えを抱いているのではと危惧したのである。
しかし、この日の「芝浜」はオフビートの、ユニークな仕立てのものであった。感心したね。主人公の魚屋の勝を、「変人」としてとらえ直す。その仕掛けによって、「芝浜」はまた、新しい噺になるのだなあ。
6年前になるか、2006年12月19日、札幌教育文化会館で初めて談春の落語を聞いた。そのときも「芝浜」だった。かみさんが実に愛らしく、「ああ、この噺家はうまいな」と実感した。そのときにこう記している。「よいものを聞かせてもらった。談春にとっても、今回の北海道独演会(昨日は室蘭でやったという)、確実に実になったのではないか。札幌の「芝浜」として語り継がれるものになったのではないか。20年後、さらに素晴らしい「芝浜」を聞かせて欲しい。それまで、生きていたい。そんなことを本気で願う夜であった」と。談春、私の期待に確実に答えてくれている。
良い噺を聞いた。それが結論である。
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