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三国一の読書野郎2012※芥川賞展望

小粒と言えば、小粒か

 5日に発表となった2012年上期(第147回)の芥川賞候補作5作を読んでみた。以下、私なりの感想と評点(5点満点)である。

 戌井昭人「ひっ」(新潮6月号):生ぬるい物語。ぬるい時間がぬべぬべっと流れ、登場人物もふにゃふにゃしている。それが快感である。ダントツに面白かった。この筆者独特の「世間」を構築しているのである。悪ふざけにとどまらない、新しい何かを気づいていると思う。4.0点

 鹿島田真希「冥土めぐり」(文藝春号):重苦しい、どろどろになりそうな話を寸止めしている、救済の物語。悪意として存在する母=家族に苦しむ主人公を、外部の人間である善良なる夫が救う。どこか「ドストエフスキー的」でもある。不思議なユーモアが漂う。3.0点

 鈴木善徳「河童日誌」(文學界5月号):極めて読後の印象が薄い。河童は何の隠喩なのか、まったくわからないし、読み取れない。実験性も乏しく、高得点は望めないだろう。2.5点

 舞城王太郞「短篇五芒星」(群像3月号):私は、個人的には、こういう文学は認めない。その軽い文体から生み出され、消費されるわけのわからない世界に何の意味があるのか、私には理解できない。閉口するだけである。しかし、こういう方向性があるということだけは、認めざるを得ない。3.0点

 山下澄人「ギッちょん」(文學界6月号):徹底的に映像化を拒否する作品である。演劇出身の作家の意図的な狙いなのか? 循環する映像群が読んでいるうちに、アルコールのように浸透してくる。かなり計算された作品であるようだ。作家は、かなりの戦略下であるようだ。しかし、初ノミネート受賞は難しいようにも思えるが・・・。3.5点

総評:全体として小粒感は否めない。その中で、戌井がぶっちぎりのおもしろさである。しかし、「これが芥川賞かよ!」と頭の堅い人は突っ込むかもしれない。私はこれこそ、芥川賞だと思うがね。鹿島田は4回目、戌井、舞城は3回目の芥川賞ノミネート。そのことから考えると、鹿島田はラストチャンスなのかな。

 よって「本命:戌井、対抗:鹿島田、大穴:山下」とみた。選考会は17日である。

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