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三国一の読書野郎2012⑦

感動したっ!

 直木賞候補作、お次は葉室麟「蜩ノ記」である。これは良い。読後、思わず、涙を流しました。

 著者は1951年生まれ。地方紙記者などを経て、2005年に作家デビューしている。歴史小説を得意とし、これまでに2回、直木賞候補に挙がっている。

<口上>豊後・羽根藩の奥祐筆・檀野庄三郎は、城内で刃傷沙汰に及んだ末、からくも切腹を免れ、家老により向山村に幽閉中の元郡奉行・戸田秋谷の元へ遣わされる。秋谷は7年前、前藩主の側室と不義密通を犯した廉で、家譜編纂と十年後の切腹を命じられていた。庄三郎には編纂補助と監視、七年前の事件の真相探求の命が課される。だが、向山村に入った庄三郎は秋谷の清廉さに触れ、その無実を信じるようになり…。命を区切られた男の気高く凄絶な覚悟を穏やかな山間の風景の中に謳い上げる、感涙の時代小説。

 きれい事過ぎるのかもしれないが、秋谷の武士として、人間としての姿勢に感じ入ること、しきりであった。声高に語らず、静かに、背中で生き方を示す。それは現代の日本人にとっては、失われてしまった美徳なのかもしれないが。

 お家騒動に巻き込まれながらも、自らを曲げずに生き抜く。そのぶれない姿勢から、何かを読み取るべきであろう。庄三郎のほか、村の人々などの描写も優しく、さらにはぐいぐいと後に引っ張る物語の展開も巧みだ。あえて難を言えば、「敵対勢力」の人間が浅いことか。

 これまでの候補作の中では群を抜いていると思う。これが本命か?

双子山評定:☆☆☆☆★。良いと思います。ご一読、お勧めします。

蜩ノ記

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コメント

葉室麟さんは直木賞候補5回目にしてやっと受賞されました。
受賞作「蜩ノ記」がラジオドラマで放送されます。NHKFM青春アドベンチャー6月18日から全10話です。

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