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三国一の読書野郎2012⑧

長くて、疲れた

 直木賞候作品を読むシリーズ、最後は恩田陸「夢違」である(桜木紫乃「ラブレス」は昨年の当欄で紹介済み)。東京新聞などで昨年春まで連載された作品だ。

 <口上>夢を映像として記録し、デジタル化した「夢札」。夢を解析する「夢判断」を職業とする浩章は、亡くなったはずの女の影に悩まされていた。予知夢を見る女、結衣子。俺は幽霊を視ているのだろうか?そんな折、浩章のもとに奇妙な依頼が舞い込む。各地の小学校で頻発する集団白昼夢。狂乱に陥った子供たちの「夢札」を視た浩章は、そこにある符合を見出す。悪夢を変えることはできるのか。夢の源を追い、奈良・吉野に向かった浩章を待っていたものは―。人は何処まで“視る”ことができるのか?物語の地平を変える、恩田陸の新境地。 夢違

 夢とか、幽霊とか、舞台仕掛けは大きいのだが、結果として導き出されるものが呆気にとられるほど小さい気がするのだが、いかがか。400ページも引っ張られて、「結局これかよ!」とさまーず三村的な突っ込みをしたくなる。

 夢を映像化する「夢札」というアイデアを思いついたとき、作家は「やった」と思ったのだろうが、その瞬発力に創作性や文体がついて行けなかったということか。全編、まさしく夢の中にいるような文章も、どこか弛緩しているような。

双子山評定:☆☆。わが世界観には合わない小説でした。

 ※さて第146回直木賞の行方は? 私は「蜩ノ記」を本命に、「ラブレス」を抑え、「春から夏、やがて冬」を対抗にするね。

 「蜩」の清冽さは、震災後のいまの日本人に求められるものだ。まさに時節にあった作品だと思う。「ラブレス」の桜木、初ノミネートでの受賞はなかなか、難しいと文壇政治的には思う。しかし、だ。桜木にとってこの作品は絶対に書かなければならなかった作品。たぶん、一生に一度書けるかどうかの作品なのだ。これで受賞できないと、以降、ノミネートも難しくなる。それほどのメルクマール的な作品なのだ。頑張ってほしいものである。

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