三国一の読書野郎※135
まあ星新一のようなものだね
「錨を上げよ」などで最近、好調な作家・百田尚樹。最新刊「幸福な生活」を読む。大長編だった「錨・・・」と正反対に今作は短編集である。
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幸福な生活 著者:百田尚樹 <口上>「道子さんを殺したのは、私なのよ」。認知症が進んでから母はよく喋るようになった。しかし、その話の大半は出鱈目だ。妻は自分がいつ殺されたのと笑うだろう。施設を見舞うたびに進行していく症状。子どもの頃に父が家出して以来、女手ひとつで自分と弟を育ててくれた母をぼくは不憫に思えてならない。久しぶりに訪れた実家の庭でぼくは、むかし大のお気に入りだった人形を見つける。40年ぶりに手にした懐かしい人形。だが、それはおそろしい過去をよみがえらせた……(「母の記憶」より)。 サスペンス、ファンタジー、ホラーなど様々な18話の物語、そのすべての最後の1行が衝撃的な台詞になっているという凝った構成。『永遠の0』『ボックス!』『錨を上げよ』で話題の百田尚樹は長編だけじゃなかった。星新一、阿刀田高、筒井康隆という名手顔負けの掌編小説集を世に送り出した! <双子山評定>百田という作家の器用さを表す作品だ。どの短篇もツイストが効いていて、楽しい。最後の1行ですとん、と落とす手法は口上にもあるように、星新一のショート・ショートを彷彿とさせるのである。 しかしまあ、同工異曲が18篇も続くと、さすがにネタも割れてくるというものだ。ちょっと、飽きてくる。 そこの当たりが星新一あたりとの違いなのだ。飽きさせてしまうだけの力しか、まだ百田にはないということだ。 だがまあ、楽しめる、ということで許す。お勧めといえばお勧めの一冊です。 →☆☆☆★ |
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