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三国一の読書野郎※89

真面目な真面目な馳星周

 馳星周の「9・11倶楽部」を読む。非常に真面目に取り組んでいる小説だと思う。傑作ではないかもしれないが、力作であることは間違いない。

9・11倶楽部 Book 9・11倶楽部

著者:馳 星周
販売元:文藝春秋
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<口上>地下鉄サリン事件で妻子を失った救急救命士が出会った、新宿で生きる戸籍のない子供たち。理不尽で惨めな境遇に追いやられた彼らがはじめた、危険きわまりない“遊び”とは

新宿浄化作戦によって、親が国外退去させられてしまった中国系の子供たち。都会の片隅で、肩を寄せ合いながら生きる彼らと関わってしまった救急救命士が、彼らを守ろうとしたために、破滅していく物語。

まあ、馳星周の物語は、すべて破滅がテーマであるから驚かないけど、本作の主人公は極めてストイックで、従来の馳星周作品の悪党とは異なることに注意すべきだろう。

そしてまた、馳星周の立ち位置がストイックであり、子供たちに同情的なのだ。だから、物語が加速・暴走していく中盤以降も、物語は吸引力を持ち、破綻しない。

ラスト、警察に追われながらもある目的のために東京都庁に向かう主人公と子供たち。切ない逃避行であるが、どこか宗教的な健気ささえ感じられた。

2008年の作品。馳星周、こっちの方向性でもっと攻めればよかったのに、と思う。実に真面目な作品である。

→☆☆☆☆

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