三国一の読書野郎※78
「殉教者」ねえ・・・
岩波新書の新刊で「コルトレーン ジャズの殉教者」というのが出たので読んでみた。著者の藤岡靖洋は呉服店を経営するコルトレーン研究家だという。
コルトレーン――ジャズの殉教者 (岩波新書) 著者:藤岡 靖洋 調査のため、何十回も渡米しており、関係者への取材も厚い。欧米では「コルトレーン学」というものは確立しており、分厚い研究書も何冊か出ているようだが、わが国では、その邦訳もないのが実情のようだ。 蓄積された研究成果を新書というコンパクトなかたちでしか、発表できないのは、著者としても口惜しいのではないか。しかし、分厚い研究書では売れないしなあ。痛し痒しだね。初心者から聞き込んだ人まで、広い間口を開けた一冊である。 しかし、コルトレーンの女性関係なんか私も、知らなかったです。でもなんというか、全体を通じてうす味なんだよね。これもまた、新書という性格上、仕方ないのかもしれないけど。音楽上の葛藤、思想上の葛藤、そういうものが見えてこないんだよね。 そして結局、「殉教者」というまとめ方をしてしまう。「至上の愛」以降の作品のとらえ方は、本書にもある通り、さまざまなんだ。そこに、「平和」「愛」「聖人」などの言葉を代入すれば、そこに現れるのは殉教者コルトレーンなのはあまりに当たり前であり、新味は全くないのだ。しかし、それは方程式的な「正解」ではないだろう。 厚い取材がもったいない。もう少し、なんとかならなかったか。 ⇒☆☆☆★ |
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