三国一の読書野郎※80
色川武大の魅力
伊集院静「いねむり先生」を読破する。著者と作家・色川武大の交流を描く長編小説である。
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いねむり先生 著者:伊集院 静 <口上>色川武大との交流を描く著者自伝的小説の傑作。女優だった妻の死後、アルコール依存、ギャンブルに溺れ、壊れてしまったボクは「いねむり先生」こと色川武大に出会う。大きな存在との交流の中で、再生を果たす。伊集院静自伝的小説の最高傑作! 夏目雅子の死後、伊集院がかくも苦しんでいたとは知らなかった。いつの間にか小説を書き始め、いつしかそれなりの作家になっていた、といういんしょうでしかなかったから。でも、現在の作家としての地位も、色川との交流がなければ、築くことはできなかったことがよくわかった。人生には、決定的な出会いがあるのだなあ。 そういう意味では、これは私小説なのだろうな。 色川と主人公が地方競輪を訪ねる「旅打ち」が楽しそうだ。特に、松山郊外の漁師宿での日々や、新潟・弥彦村での酒盛りなどが非常に印象的。幻想的でさえあり、この作家の力量を感じさせられた。 しかし、肝心の先生・色川がなぜ、かくも、多くの人々に愛されるのか。慕われるのか。そこが描き足りない。色川を通じた伊集院自身の回復の物語なのだから、単なる「いねむり先生」だけではない何かを描き出すべきだったように思うのだ。 神経症の描写やアルコール中毒の描写は真に迫る。当人にしかわからない苦しみを、描き出し、第三者である読者の神経をも震わせること。それができる作家は一流である。 ⇒☆☆☆★
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