三国一の読書野郎※50
疾走するクライムノベル
チャック・ホーガンの「流刑の街」を読了する。ボストンを舞台にした、麻薬取引きをめぐるクライムノベル。疾走感あふれる仕上がりである。
流刑の街 (ヴィレッジブックス) 著者:チャック ホーガン ここはボストン。イラク帰還兵のメイヴンはの駐車場で夜間警備員として働く。ある晩、強盗に襲われた彼は、反撃のすえ相手を半殺しにする。翌日、一人の美しい女からある人物に連絡するよう伝言を受ける。待っていたのは元軍人だという謎めいた男ロイス。彼はメイヴンに自分のチームで働かないかと言ってきた。除隊後、鬱屈した日々を送るメイヴンのような男たちを集め、麻薬組織を襲撃して街を浄化すること―それがロイスの仕事だった。戦場を思い起こさせる仲間たちとの絆と多額の報酬、すべては完璧に思えた。ある日歯車が狂いだし、街に血が流れ始めるまでは。 太平洋、朝鮮、ベトナム、湾岸、イラク・・・。海外で戦うたびに、アメリカには「帰還兵」が生まれる構造がある。「タクシー・ドライバー」然りである。 この作品では、「国のために戦った」はずの若者たちが、帰国しても何ら、生きがいを見いだせず、逆に危険視されるような屈辱を受けながら生きる苦しみの果てに、「街を浄化する」かのような仕事に身を捧げ、滅びていく姿を活写している。「善き言葉」の陰には常に「悪い試み」があるのだ。 だまされ、裏切られたメイヴンが復讐の鬼と化してからの疾走感がすごい。一気に、殲滅戦である。「そんなに強いのなら、最初からやれよ!」という突っ込みを入れたくなるが。 ジャマイカ人の殺し屋が強烈なキャラクターだ。麻薬取締局の黒人捜査官もしょぼくれたいい味を出している。この手の、ミステリーは、脇役の立たせ方で、面白さも段違いになる。 →☆☆☆ |
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