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三国一の読書野郎※48

傷つく弱きものたちのために

 島本理生の最新長編「アンダスタンド・メイビー」を読み終える。1400枚にも及ぶ長編だが、リーダービリティーは素晴らしい。しかし、その内容は重い。

アンダスタンド・メイビー〈上〉 Book アンダスタンド・メイビー〈上〉

著者:島本 理生
販売元:中央公論新社
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舞台は茨城県つくば市。主人公の藤枝黒江の中学時代から物語は始まる。母親と暮らす黒江には、仲の良い友達はいるが、どこか危うい人間関係の中にいる。特に母親との関係は刃の上を歩くように危うい。

高校に進むと、ますます、黒江をめぐる人間関係は軋みだす。特に男性関係。複数の男性と関係しながら、やがて、追い詰められた黒江は高校を退学し、あこがれていたカメラマンが住む東京へ向かう。そこのカメラマンに弟子入りし、アシスタントとして働く黒江だが、余りに重い過去が、彼女に襲いかかる。

奔放なようできまじめ、きまじめなようでたやすく羽目を外す少女の造形に、戸惑った。しかしそれらは全て、終末のカタルシスへ向かう伏線なのである。「母と娘の関係」「救い」など、さまざまなテーマを内包している。少女の生態を描くようでいて、実際は極めてダイアローグ的な小説でもあるのだ。

最後半部に至って、物語はいきなり転調する。彼女が抱えてきた苦しみの原因が、邪悪なるものが明らかになる。彼女はそれに耐えきれるのか。

この黒江のような、傷ついた弱いものたちのためにこそ、文学はあるのだな、と思う。著者は読者に対して、直球勝負を挑んでくる。先に挙げた「きことわ」とは正反対の文学である。「いかに書くか」ではない、典型的な「何を書くか」の文学である。

→☆☆☆☆

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