三国一の読書野郎※37
頑張れ賢太。応援するぞ
西村賢太の芥川賞受賞作「苦役列車」を読む。いやはや、すごい作家だよ、賢太。私は断固、支持するぞ。賢太の時代が来るよ、きっと。
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苦役列車 著者:西村 賢太 |
中学を卒業後、定職にも就かず、荒んだ暮らしを続ける北町貫太は19歳。小学生のころ、父親が破廉恥な性犯罪を犯し、生活が崩壊してしまった。誰一人、友人と呼べる男も女もいない、孤独な貫太だが、日傭い仕事の中で、ようやく専門学校生とうち解けたのだが。
私小説である。暗い私小説である。救いはどこにもない。しかし、ある意味突き抜けてしまっていて、明るいのである。車谷長吉よりは、はるかに、明るいのである。
もっとも、19歳の青春に、明るさなんか、どこにもあるはずがないんだ。賢太に限ったことではない。
それはそれとして、この小説が芥川賞を獲った意義は大きいのではないか。時代は、このような文学を求めている、ということなのだから。このような文学とは、私小説だ。小難しい文学理論をバックグラウンドにせず、ただ自らの体験を、恨み辛み、呪詛、妬み嫉みをたっぷり盛って、綴っていくこと。
併収「落ちぶれて袖に涙のふりかかる」もイイ。こちらは40を超えた現在の心境を描いているのだが、ギックリ腰の描写が凄まじく痛そうで、こちらも辛くなってくるぞ。
→☆☆☆☆★
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