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三国一の読書野郎※43

感覚に響くもの

 西村賢太と同時に、今年の芥川賞を受賞した朝吹真理子の「きことわ」を読む。26歳とは思えないほどの「上手さ」がある。読者の感覚に響いてくるサムシング・エルスがある小説だと思った。賢太とは正反対の作風だ。

きことわ Book きことわ

著者:朝吹 真理子
販売元:新潮社
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葉山の別荘で少女時代、夏休みを過ごした貴子と永遠子の物語である。別荘を処分するために25年ぶりに再会した2人が、過去と現在、夢と現実の境を行き来する。

言葉が粒立っているというのだろうか、濃密なのだ。だから少々、初めは冗長にも思われるのだが、独自のリズムになれてしまうと、夢の中を漂っていくように、物語の中に入っていける。

意識の流れ、時間へのこだわりは、多分にプルーストの影響を受けているのだろうな。そこが少々、見えてしまうところがあるのだが。

テーマとしては非常に些細なものだ。古生物や宇宙の話題も振られるが、それは収縮するテーマを拡大する役には立っていないようだ。

しかし、この作家はテーマではなく、つまり何を書くかではなく、どうやって書くか、すなわちエクリチュールの人なのである。それだけの技術を確保している作家である。

文芸春秋の選評の中で山田詠美がこの小説について「小説を書くということは、茫漠としたかたまりに、それしかない言葉を与え続けて埋め尽くすことなんだなー、と久々に思いだしたような気がする」と書いている。至言である。「ここには作者の選び抜いた言葉だけが揚げられていて、読み手の無責任な口出しを許さない」とも。まさに、そのような成り立ちをしている小説である。

だが、これだけの完成度を見せてしまうと、次作は難しい。次作が正念場だろうな。

それでも私は賢太の方が好きだが。

→☆☆☆☆

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