三国一の読書野郎※26
なかなかのものですよ
期待の道産子新鋭作家・乾ルカの「蜜姫村」を読む。なかなかのエンターティンメント作品に仕上がっているじゃないですか。その実力に、感心しました。
密姫村 著者:乾 ルカ |
伝奇ミステリーとでもいうのでしょうかね。変種のアリの研究のため、東北の無医村に滞在することになった昆虫学者の夫と医師である妻。表面上は優しい村人だが、妻はあることに気付く。「医師がいない村なのに、みんな健康すぎる」と。
「ホラー」とする書評もあるが、「恐怖」はそれほど、感じなかったな。まあ、ある程度、先が読めてしまうところがあるのですよね。しかし、それはそれとして、ページを繰らせる力は相当なものです。
現在、昭和40年代、戦国時代という3つの時間を往来する、練られたプロットにも拍手です。
この作家の文章はセンテンスが短く、読みやすい。しかし、いただけなかった表現も。ひとつは89ページ「古都京都の歴史的建造物を思わせるたたずまいでそれらはあった」。倒置法か? 「それらは~」とストレートに書いた方がいい。
もうひとつは、92ページ「喩えるならば蚕が吐く細糸で構築されているような脆弱な精神性」。こういう「文学性」に満ちた表現は、このような小説の中では浮いてしまいます。
などと細かな点でイチャモンはありますけど、十二分に及第点です。ラストも効いています。後味さわやかなんです。さらなる傑作を期待したいですね。
→☆☆☆★
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