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三国一の読書野郎⑪

悲惨な顔の舌に涙あり

 終戦直後、「珍顔」の落語家として一世を風靡しながら、1950年に東京・銀座で進駐軍のジープにはねられ、即死した三遊亭歌笑。その33年の短い生涯を描く「昭和の爆笑王」が面白い

昭和の爆笑王 三遊亭歌笑 昭和の爆笑王 三遊亭歌笑

著者:岡本 和明
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 大正5年、東京都下の裕福な製糸業者の家に生まれるも、母親の乳の出が悪いため他家に養子に出され、後に実家に引き取られるなど歌笑(本名・高水治男)の生涯には独特の暗さが漂う。

 さらに凄まじいのは、その顔である。えらがはり、斜視。しかも片目の視力はほとんどない。家族からもうとまれ、特に姉妹の結婚式にも招かれることがなかった。その理由も、「あの顔を観て、変な血が流れていると思われたら困る」というのだから、家庭内差別である。

 そんな寂しい少年時代を過ごしたからか、「笑い」に興味を抱くように。ラジオで聞きおぼえた落語を製糸工場の女工らに聴かせるときの治男の笑顔は明るかった。

 2度の家出の末に、柳家金語楼の門をたたく。その顔に驚くキンゴロー。しかし、「こいつは何か持っている」と感じ、三代目三遊亭金馬に紹介する。

 厳しい修業は続くが、なかなか、芽は出ない。しかし、あるときにやけになってかけたネタがきっかけになって、「何か」をつかむ。

 出生から修業時代までが暗く、長く、成功する終戦直後からその死までがかけ足になってしまった感はあるが、密度の濃い落語家評伝である。

 背広姿で高座に上がり、歌を歌う。古典はやらない(やれない)。「我、垂乳根の体内より出し頃は長谷川一夫も遠く及ばざる眉目秀麗なる男の子なりし/世の変わりとともに我が美貌も一変しフランケンシュタイン第二世の再現を思わせる如く豹変せり」(純情詩集)などの自ネタの元祖ともいえる芸風は「俗悪」「邪道」「外道」と呼ばれたらしい。しかし、坂口安吾もいうように新しいものは常に俗悪なんだ。斜に構えた落語なんぞから、新しいものは出てこない。

 昭和落語史としても面白い。お勧めです。

⇒☆☆☆☆

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