三国一の読書野郎※22
ある特攻機の記録
1945年9月2日、日本の降伏文書調印式が行われた米戦艦ミズーリ。さかのぼること5カ月前、沖縄戦時に、この艦に突入しようとする零戦をとらえた、有名な写真がある。この機を操縦していたのは誰か? 推理を巡らせながらも、特攻に散った青年たちの無念さを伝える一冊が「戦艦ミズーリに突入した零戦」だ。
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戦艦ミズーリに突入した零戦―米海軍水兵が撮影した決定的瞬間 (光人社NF文庫) 著者:可知 晃 |
1945年4月11日14時43分。米戦艦に突入寸前のカミカゼ。決定的瞬間に隠されたある特攻の軌跡。NHKドキュメンタリー番組「神風特攻隊・ミズーリ突入の軌跡」を生んだ執念の調査全記。
零戦は甲板に激突し、火災が生じたが、すぐに消し止められ、人的被害はなかった。甲板にはパイロットの上半身が投げ出された。ミズーリの水兵たちは、」自分たちを殺そうとしたこの「ジャップ」に憎悪をたぎらせ、死体を海に捨てようとした。しかし、ミズーリの艦長ウィリアム・キャラハン大佐は丁重な水葬を命じた。ミズーリは現在、ハワイ真珠湾に記念館として係留されているが、このエピソードは艦上で必ず、語られるそうである。
この零戦は、第5御楯隊に所属することはわかっていたが、個別具体的なパイロット名は明らかになっていなかった。著者は日米の軍事資料を読み解きながら、その姿に迫っていく。
力作である。著者はビジネスマンだったが、定年後、真珠湾でミズーリを見学。このエピソードを知り、調査に乗り出したという。特攻機を目的地まで掩護した経験があるパイロットの証言など、貴重な資料も多く含まれている。
それにしても、「特攻」の非常さと、散っていた青年たちの重い思いに、胸が詰まる。彼らの犠牲の上に、戦後の繁栄はあり、そしてまた、新たな転換期を迎えつつあるのが現代日本の状況なのであるな。
→☆☆☆★
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