三国一の読書野郎※29
戦後復興と技術者と
吉村昭「光る壁画」を読む。戦後間もなく、世界で初めての胃カメラ開発に挑んだ技術者たちの物語だ。あすに大腸内視鏡を控える身にとっては何とも興味深い世界である。
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光る壁画 (新潮文庫) 著者:吉村 昭 |
モデルはオリンパスらしい。昭和24年、東大医学部の助手から「胃の中を撮影するカメラができないか」という提案をされた技術者たちが、前代未聞の開発にいたる道筋を描く。吉村独自の、クールな筆致が心地よい。
未読の吉村作品のひとつだった。思えば、吉村昭は「医学もの」が得意である。「ふぉん・しいふぉるとの娘」「冬の鷹」などだ。誰もなしえていない、前代未聞の労苦と格闘する人間像というのが、作家の得意とする分野でもあったのだ。そしてそこには、過剰な修飾を排した、「吉村節」とでもいうべき文体がぴったりなのだ。
未読の吉村作品も少なくなってきて、さびしい想いもする。
しかしまあ、カメラを胃袋の中に入れるなんて言う発想はなかなか、出ないよな。動物実験で、初期の胃カメラを何回も入れられる犬の描写なんて、犬好きにはちょっと、たまらないものがある。でも、そのおかげで、医学は発達したのだが。
そして私は、肛門からカメラを入れるため、処置室へ向かうのであった・・・。
→☆☆☆★
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コメント
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プロジェクトXでもやってたね。
投稿: づかこ | 2011年1月26日 (水) 13時19分