三国一の読書野郎⑬
ある聖女の物語
川上未映子の「ヘヴン」。がつん、と来た。
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ヘヴン 著者:川上 未映子 「僕」は中学2年生。斜視ゆえか、学校で激しいいじめを受けている。そんな「僕」に同じように学校でいじめを受けている女の子「コジマ」から、手紙が届くようになる。2人のひそかな交際はやがて・・・。 いじめを論理的・倫理的に描こうとしている作家の真摯な姿勢に、まずは感心した。の作家は「邪悪なるもの」に向かいあっているからだ。 しかし時に知が勝ってしまってリアリティーをなくす。そこに欠点はある。特に主人公といじめる側のサブ的存在の会話は、中学生のものではない。 コジマは聖女である。物語が進むに従って、次第に聖性を帯び、やがては狂気の聖女となって昇天する。魂は洗われ、浄化され、すべてを赦す。すべてを認める。すべてを受け入れる。 そう、これは極めて宗教的な物語ではないのか。 だが、小説的なカタルシスはない。喪失の物語だからか。しかし、がつん、と来る。生きなければならない者たちへの哀れみを思う。 ⇒☆☆☆☆ |
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