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読む快楽2010※84

今は昔の話

 かつて、「文学論争」はジャーナリズムをにぎわせた。小谷野敦「現代文学論争」は、1960年代から2000年代初めまでの17の文学論争の論点をまとめた1冊。

現代文学論争 (筑摩選書) Book 現代文学論争 (筑摩選書)

著者:小谷野 敦
販売元:筑摩書房
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 収録された論争のうち、私の記憶にあるのは、川端康成をめぐる「事故のてんまつ」事件のものだ。しかし、以降のものでもまったく知らなかった論争もある。極めて狭い範囲の中でしか闘われなかった論争もあるのだ。小谷野は非常にうまく敷衍し、論争のポイントを的確にまとめている。

 論争によって、70年代以降の日本文学地図が鳥瞰できるのだ。「反核」「湾岸」などの政治的な動きもまた、いまとなってはなんだったのかという思いは残るが。

 しかし、かつてのような文壇を二分するような文学論争が起こりうるのか、今後。まあ、「文壇」がなくなった(私は個人的にはなくなったとみなしている)時代には、論争は存在せずに、相互に「不可侵条約」を結びながら、互いのやりたいような文学をやっていくしかないのではとさえ、思う。決して、文学にとって幸福なことではないが。

 だから、この書に書かれていること、柳美里の一件についても、なんだか遠い昔の話のような気がしてしまうのだ。

⇒☆☆☆★。この著者はポレミックだが、外してはいない。そこを買う。

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