読む快楽2010※79
無念なり、井上ひさし
井上ひさし最後の長編小説となった「一週間」を読む。シベリア抑留をテーマにした、力作ではあると思う。
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一週間 著者:井上 ひさし <あらすじ>昭和21年早春、満洲の黒河で極東赤軍の捕虜となった小松修吉は、ハバロフスクの捕虜収容所に移送される。脱走に失敗した元軍医・入江一郎の手記をまとめるよう命じられた小松は、若き日のレーニンの手紙を入江から秘かに手に入れる。それは、レーニンの裏切りと革命の堕落を明らかにする、爆弾のような手紙だった……(新潮社ホームページより)。 途中までは、ページを繰るのがもどかしいほどに面白い。ユーモア作家として、非凡な才能を発揮した井上らしいおかしさと、旧日本軍の理不尽さ、スターリン独裁の狂気への異議申し立てがうまく絡み合って、抜群のリーダビリティを醸し出しているのだ。 それゆえに、最後のあっけなさがしらけるのだ。たぶん井上、自らの死期を察していたのだろうか。あまりにもあっけない幕切れに、読者は呆気にとられてしまう。 多分に推敲という作業は大事なのだなあ、と痛感させられた。加筆訂正をして、作品は成立するんだなあ。何とも残念な作品になってしまった、遺作なのに。 ⇒☆☆★ |
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