効く喜び2010⑥
大きな音で聴けば大きなものが反響する
かみさんが、私用で朝から函館へ。そこで朝からCDを聞きまくっている。
かみさん、ビートルズ嫌い。休みの日もなかなか、かけられないわけです。
まずは「ア・ハード・デイズ・ナイト」。やはり、大きな音で聞くリマスターは違うぜ!タイトル曲の冒頭の「ジャーン♪」からして、違う。ジョン・レノンのロッカーとしての才能が完全に花開いていることがよくわかるアルバムである。
マジカル・ミステリー・ツアー アーティスト:the Beatles,Beatles,The Beatles,ザ・ビートルズ |
お次は「マジカル・ミステリー・ツアー」。そのコンセプトはたいしたことないが、曲は秀逸な物がそろっている。何しろ、ポップだよな。「ユア・マザー・シュッド・ノウ」「ハロー・グッドバイ」などのポール主導の曲は特にポップ。そのポップさゆえに軽んじられるポールの悲劇をそこに観る。
3発目はデビューアルバム「プリーズ・プリーズ・ミー」だ。
プリーズ・プリーズ・ミー アーティスト:the Beatles,Beatles,The Beatles,ザ・ビートルズ |
みんな嬉々として演奏し、歌い、ハモっているものなあ。これから、彼らは世界を制覇する。栄光と苦悩が待ち受けている。でも、そんなことを彼らは知る由もない。ただ、好きな音楽をやっているだけだ。なんだか、聞いていてじ~んとしてくるよ。ラストの「ツイスト・アンド・シャウト」。ジョンの声が枯れかけているぜ。スタジオで1日で録音して作ったアルバムだというからなあ。
4枚目は「ヘルプ!」。
ヘルプ! アーティスト:ザ・ビートルズ |
このアルバム、アイドル路線を走っているような映画のサントラ盤的な扱いを受けている向きもあるが、収録曲は面白いね。それこそ、ボブ・ディランを意識した「悲しみはぶっ飛ばせ」のようなアコースティックあり、ラストのカバー曲「ディジー・ミス・リジー」ありでまとまりには欠けるが、この辺から4人のやりたいことの方向性の違いが明らかになっていると見る。「リボルバー」まではあと半歩だ。
ビートルズ連続4枚聞きに続いてはディラン聞きだ。最初は最近購入した「タイム・アウト・オブ・マインド」。
1997年リリース。このころ、リアルタイムでは真面目にディランに取り組んでいなかったな。昔の音源、いわゆるブートレグ・シリーズの方が面白く、リアルタイムで出すディランにはついていけない思いがした。だから、買わなかったのだと思う。
最近、よく出ているディラン本でこのアルバムの評判がよいので、だまされたと思って買ってみたのだ。通しで聴くのはきょうが初めて。
この鼻にかかり過ぎた声にはついていけない人も、いや、ついていけない人の方が多いだろう。しかし、収録曲がなかなか、よろしいのだよ。「スタンディング・イン・ザ・ドアウェイ」「ノット・ダーク・イェット」「メイク・ユー・フィール・マイ・ラブ」などなど、この人にしか歌えない曲が満載だ。食わず嫌いはいけません。
続いては「ストリート・リーガル」。ボブ・ディランではなく、これはポップ・ディランだぜ。実にポップなアルバムだ。世の評価は低いようだが、これはこれで、ディランの到達点なのだが。
ストリート・リーガル アーティスト:ボブ・ディラン |
このころのディランの声はいい。聞きやすい。「タイム・アウト・・・」の正反対のところにある。リリース時は1978年。ディランがポップ路線を選んだ理由はこの時代にあるのだろうな。「チェンジング・オブ・ザ・ガード」「ノー・タイム・トゥ・シンク」「イズ・ユア・ラブ・イン・ヴェイン?」などなど、名曲の宝庫である。
しかし、このアルバムを発表後、ディランは「停滞期」に入るのである。
だから時代を逆行して、1976年リリースの「激しい雨」を聞いたのである。
激しい雨 アーティスト:ボブ・ディラン |
口のところのシール、何とかしてくれ。しかし、このアルバム、何回聞いたかなあ~。高校3年生の時だよ、出たのは。ローリング・サンダー・レビューという全米ツアーのライブ。カッコよかったなあ、ディラン! でも、このアルバムが「当時、勃興しつつあったパンク・ムーブメントに対するディラン流の回答」というのも無理があるような気もするがね。
自分の曲を解体し、再構築するのがある意味、ディランの魅力でもある。その点でこのアルバムにおける再構築はものすごい。「いつもの朝に」「レイ・レディ・レイ」、身震いするほど、本当に、言葉の真の意味で「格好がいい」のだ。ぼくは天才の存在を信じた。それが、ディランであった。
ならば天才の真の天才的な作品を聞こうと思い、「ブロンド・オン・ブロンド」をターンテーブルに置いたのである(←LPかよ!)。
ブロンド・オン・ブロンド アーティスト:ボブ・ディラン |
このアルバムはロック史上初の2枚組といわれている。CD時代のいま、その意味・意義は失われているが、2枚目の片面(つまりD面)を1曲だけで埋めてしまったのがディランという男である。その曲こそ「ロウランドの悲しい目をした乙女」。私の葬式で繰り返し流すように、かみさんに伝えている至上の名曲である。
しかし、このアルバムのすごみを頭から順に聞いていて実感させられた。本当に、当時のディランは音楽の神様に魅入られていたのだ。次から次へと、メロディーが転がっていく。歌詞が出てくる。「スーナー・オア・レイター」「アイ・ウォント・ユー」「ジャスト・ライク・ア・ウーマン」「「メンフィス・ブルース・アゲイン」・・・。名曲が降ってくる。なぜ、このアルバムがもっと語られないのか、実に不思議である。
ここまで来たらこの「ブロンド・オン・ブロンド」を生みだしたものへ踏み出さなければならないから、前作「ハイウェイ61リヴィジテッド」を聞く。
追憶のハイウェイ61 アーティスト:ボブ・ディラン |
しょっぱなの「ライク・ア・ローリング・ストーン」にやられるけど、このアルバムもまた、すごいよなあ。ほとばしってくるのだ、音が、言葉が。「言葉なんてわかるのかよ」と問うなかれ。意味なんてわからなくても、その言葉の響きだけを聞けばよい。ディランは酔わせてくれるぜ。
「やせっぽちのバラッド」「クイーン・ジェーン」「親指トムのブルースのように」「廃墟の街」。これらは本当に名曲です。言葉が妖しくも美しいメロディに乗った時、その相乗効果で音楽が輝きだす。その具体的な実例です。
ディランには驚かされることばかりだ。聞けば、聞くほど。ディランもリマスターヴァージョン出してくれないかな。
あ~、よく聞いたぜ、きょうは。
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コメント
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聴きまくりましたね。初期ビートルズのジョンの素晴らしさ。その後のポールの才能開花。ジョンの嫉妬が解散の原因ではと思ってしまうほど。マジカルのご指定2曲はホントによいです。
ディランも素晴らしい。『タイムアウトマインド』のジャケットって『セロニアスヒムセルフ』ににてる。そーでもないかな。《ユメイクフィールマイラヴ》はわたしもお気に入りです。鼻音もそれほどいやな感じがしません。それより最近の声のほうが私的には気持ち悪いです。『ストリートリーガル』の《イズユアラヴインヴェイン』は私の中ではベストの中の一つ(こんな言い方あるのか)。『激しい雨』のジャケットはキモイ。でも中身はグッドです。《いつもの朝に》ですね。
でました。『ブロンドオンブロンド』。名曲ばかり。だから普段あまり聴きません。
『追憶のハイウェ』はなんだかんだで《ローリングストン》で決まりの感あり。でもご指定の曲もやはり素晴らしい。
投稿: miles_davis2000 | 2010年6月16日 (水) 00時37分
まだまだ、聞かないと。聞きなおさないと。いろんな可能性が
眠ってますね、本当に。
投稿: 双子山親方 | 2010年6月21日 (月) 21時53分