読む快楽2010⑪
ブックガイドの愉しみ
椎名誠の「活字たんけん隊」を読む。著者が岩波新書から出すブックガイドはこれで4冊目だ。岩波書店の月刊誌「図書」に連載しているコラムをまとめたものである。
私自身、ブックガイドというか、読書案内は大好きだ。1冊読むだけで、そこで紹介された多くの本を読んだ気になれる「お得感」があること、本当に面白そうな本だったら、書店で血眼になってその本を求めるというよろこびもまた、付随するからだ。
椎名は旅する作家だから、紹介される本もいきおい、紀行などが多くなる。また、SFも多い。SFはわが興味の対象外だから、それほどのものを喚起されることはないが、まあ、この年齢になったら、これからはまず、地球の裏側などに行く機会はないであろうから、ユニークな紀行には心を動かされることがないでも、ない。
しかし、椎名も不思議な作家で、というか、私自身は作家というより、エッセイイストという肩書の方が適していると思っている。「本の雑誌」の創刊間もないころ(今でも編集長はやっているのか?)のアナーキーな魅力、それは1980年代前後だったと思うが、「昭和軽薄体」などと言われていたが、そんなブームとは関係なく、椎名のエッセイは面白かった。
いつの間にか、自らが権力になってしまっていた。90年代以降のものからは、意図的に遠ざかっていた。小説は数冊読んだが、読破できなかった。面白くなかったから。
だが椎名も枯れずにここまでやっているのだから、たいしたものだ。この手のエッセイにおける椎名が、一番光る。
⇒☆☆☆。いつまでも若くいることは難しい。
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