読む快楽2010⑤
静かな感動に浸る
帚木蓬生「水神 上下」を読む。読後、静かな感動が襲う傑作である。
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水神(上) 著者:帚木 蓬生 |
舞台は天草の乱からしばらくたった九州は筑後川流域の江南原。天の恵みとなるはずの筑後川なのだが、その水は、一滴も流域の村に流れてはこない。貧しい暮らしを余儀なくされる百姓たち。そこに5人の庄屋たちが意を決して立ちあがる。私財を投げ打ち、水門を築こうというのである。身命を賭し、戦って散る覚悟の男たち。そこに老武士の熱い思いもからみ、難工事は進むのである。 帚木、医者出身であるので医療物を得意としているのだが、一方で歴史物、戦争物も得意。要するに守備範囲が広いのだ。東京大空襲の秘話を描いた「灰燼」も感動的だった。 「水神」の主役は庄屋たちだ。実に百姓思いの、頼りになる男たちだ。激しい感動というより、静かな、波のような感動が伝わってくる。そう、水上を来るさざ波のような。 ⇒☆☆☆☆★ 。お勧めです。
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