本を読む日々2009※49
さすがにうまい奥田英朗
奥田英朗も新作が出ると思わず、買ってしまう作家のひとりである。新作「無理」もその期待に応えてくれる長編であった。作家の話術にすっかり、はまってしまうのであった。
無理 著者:奥田 英朗 |
おもな登場人物は5人。いずれも合併で誕生した地方都市「ゆめの」に住む。弱者を主張する身勝手な住民に嫌気が差しているケースワーカー、東京の大学に入って、この街から抜け出そうとしている女子高生、詐欺まがいのセールスをする元暴走族、スーパーの万引き防止保安員をしながら新興宗教にはまる孤独な中年女性、近く県議会にうってでるつもりの二世の市議会議員ーの5人である。
この5人の日常が、1章ごとに繰り返されていくのだが、その日常がやがて、少し筒ではあるがきしんでくる。そして、無関係だった5人は最後にはひとつの場所に収束していくのである。パズルの最後のパーツがかちり、と音を立ててはまるようだ。
地方の閉塞感を描いて秀逸でもある。疲弊した地方のどうしようもなさ。そこで生きるも、脱出を図るも、いずれにせよ辛いことだ。だからと言って都会で暮らすことが辛くないとも言えないのだが。
もう少し「希望」もほしいのだが、元暴走族のたくましさや、女子高生の「幸運」に希望を見出すべきなのだろうな。いずれにせよ、奥田の得意な群像劇が、もっともうまいかたちで展開されている。お勧めです。
⇒☆☆☆☆。安定感が出てきました、奥田英朗。
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