本を読む日々2009※34
陰惨なミステリ
トム・ロブ・スミスの「グラーグ57」は何とも陰惨なミステリだ。読後も気が滅入る。
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グラーグ57〈上〉 (新潮文庫) 著者:トム・ロブ スミス |
舞台は1956年のソ連・モスクワ。フルシチョフによるスターリン批判が行われた直後である。元KGB職員のレオは、今では殺人事件の捜査に当たる刑事だ。
かつてのKGB関係者が殺害される事件が続発。その動きがレオにも押し寄せる。家族を守るため、彼はシベリアの強制収容所に潜入。ある人物を救出するミッションを帯びる。
まさにソルジェニーツィン「収容所群島」の世界。このテーマはあまりにも重く、このようなミステリにおいて消化できるものではない。
この作家、前作「チャイルド44」では、ソ連邦で実際に起きた幼児連続殺人と、農業集団化のウクライナで起きた大飢饉とを合体させ、壮大な物語世界を構築することに成功。1979年生まれにしては、よくソ連のことを勉強しているなとは思うが、今回はちょいと無理筋が立ち過ぎだ。
ワルシャワ条約機構軍のハンガリー・ブダペスト侵攻などの歴史的事実をバックグラウンドに据え、重みは出しているのだが、いかんせん、カタルシスのないミステリとしてしか記憶されないであろう。
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