スクリーン2009⑳
長さを感じさせない傑作
スパイク・リー監督の「セント・アンナの奇跡」をスガイにて観る。傑作だ。2時間40分という長さを感じさせない。
<あらすじ=goo映画より>ニューヨークの郵便局で働く定年間近の局員・ヘクターが、ある日窓口で切手を買いに来た男性客をいきなり銃殺した。前科や借金などもなく、精神状態も良好の実直な男だった。家宅捜査の結果、彼の部屋から長きに渡って行方不明となっていたイタリアの貴重な彫像が発見された。一向に犯行動機を口にしないヘクターだが、やがて重い口を開く。謎を解く鍵は第2次世界大戦真っ只中の1944年、イタリアのトスカーナにあった。
アメリカ黒人社会を描き続けてきたスパイク・リー監督としては、異色の題材のようにも思える。しかし、「黒人にとっての第二次世界大戦」という視点からは監督の営為の延長線上にあるものだ。
原作・脚本は、叔父がかつて黒人のみで編成された部隊「バッファロー・ソルジャー」の隊員だったジェームス・マクブライド。1944年8月12日、イタリアのトスカーナでナチスがイタリア市民を殺害したセントアンナの大虐殺を下敷きに作り上げた物語である。
リー監督はこの虐殺の伏線に、イタリア人パルチザンによる仲間同士の裏切りを置いたため、イタリア国内で一部から強い反発を受けたそうだ。実際にパルチザンとして戦った老兵らからだ。しかし、監督は「謝罪はしない。悪いパルチザンもいただろうし、良いナチス親衛隊兵士もいただろうから」と突っぱねたという。立派だ。表現者として、素晴らしい。日本のメディアだったら、まず、謝ってしまうだろう。
2時間40分。確かに不要だとも思われるエピソードもあるのだが、だれない演出はたいしたものだ。
しかし、「宗教的メッセージ、ファンタジーと人種差別問題とは、同一の映画の中では論じきれないのではないか」などの批判もあるだろうな。そんな批判は、最初から想定したうえでの2時間40分だと思うがね。
« イーストウッド研究⑭ | トップページ | 昼食としての現在※49 »
「映画・テレビ」カテゴリの記事
- 三国一の映画野郎2017④(2017.04.02)
- 三国一の映画野郎2017②(2017.03.05)
- 三国一の映画野郎2017①(2017.01.29)
- 三国一の映画野郎2016⑩(2016.10.08)
- 三国一の映画野郎2016⑧(2016.09.17)
この記事へのコメントは終了しました。
コメント