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スクリーン2009⑫

やはりすごいイーストウッド

 公開初日に見てきましたよ。スガイまで。クリント・イーストウッド監督、主演の「グラン・トリノ」。何にも言えませんね。「すごい!」の一言です。なぜ、ここまでの傑作をものすることができるのか、不思議です。79歳のじじいのどこに、これだけのエネルギーがあるのか、放心するしかない。

<あらすじ>妻を亡くし、空虚な生活を送るコワルスキー(イーストウッド)は朝鮮戦争でシルバースター勲章を受けた「英雄」である。しかし今、愛犬とともに生きる彼は、未来には何の希望も抱いていない。2人の息子との関係も希薄だ。ある夜、隣家の少年タオが、コワルスキーの大事にしているフォード車、1972年型グラン・トリノを盗もうとする。タオに銃を向けるコワルスキー。しかし、タオはアジア系の不良少年のパシリ。コワルスキーはタオや、彼の家族との触れ合いの中で、かたくなだった心がほぐされていくのを感じる。しかし、不良少年たちはしつこく、タオとその家族に迫ってくる。

<能書き>タオはラオス山岳民族のモン族である。ベトナム戦争で米軍に協力したため迫害され、米国に移住せざるを得なかったのだ。映画の舞台は、たぶん、デトロイト。イーストウッドもフォードの組立工を長年務めたという設定だ。だからだろう、ものすごく、治安が悪い。

 人種差別主義者であるイーストウッドもまた、ポーランド移民であるという設定。近所のイタリア人床屋らと、民族差別ギャグの応酬をしている。まちを歩けば、黒人やメキシカンやプエルトリカンのギャングがうろうろ。すごいところだ。白人は逃げ出すね。

 このポーランド移民とモン族にいまのアメリカを語らせることに、イーストウッドの映画術があるのだ。アメリカの保守本流であるべきWASP(白人・アングロサクソン・プロテスタント)がへタレとしてしか、描かれていない。アメリカのメインな産業として屹立したシンボルとしてのフォード組立工。アメリカの世界の警察官としてのシンボルだったベトナム戦争。ともに、今現在はへたれてしまった、シンボル。ここからイーストウッドはアメリカを再確認していく。そして、最終的なメッセージを残すのだ。非アメリカ的なメッセージを。

 この映画の素晴らしさは、そこはかとないユーモアをちりばめていることだ。多くの人に、これからの人生への希望を与えうる映画であると思う。

⇒☆☆☆☆☆ 見てください。無駄にはなりません、決して。

※しかし、職場のBBオヤジ、いつもどおり、勤務中に観にいったのだが、「う~む」と首をかしげていましたね。「俺には、う~む」。まあ、こういう反応もあるのが映画ですからね。オヤジの意見も尊重します。でもなあ、オヤジ世代には感性としてぴったりと来ないかなあ?

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