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書評2008◎22

ナチスは特殊なのか?

 「ナチスによるユダヤ人大量殺戮の全貌」という副題を持つ芝健介「ホロコースト」を読む。ヒトラー独裁下で行われたユダヤ人大虐殺の実行過程を描き出す。新書というコンパクトな形態ながら、その内容はショッキングである。

ホロコースト―ナチスによるユダヤ人大量殺戮の全貌 (中公新書 (1943)) Book ホロコースト―ナチスによるユダヤ人大量殺戮の全貌 (中公新書 (1943))

著者:芝 健介
販売元:中央公論新社
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 著者は「武装SS」などの著作があるナチスドイツ研究家。

 本書によると、ナチス政権は当初、ユダヤ人を大量殺戮する意図はなかった。ウガンダやマダガスカル島へ追放する案も、真剣に検討されていた。しかし、対英仏開戦、ポーランド侵攻などにより、ユダヤ人政策は追放から隔離政策に転換。さらに独ソ戦の開始により、隔離から絶滅収容所による最終解決に至ることになった。

 しかし、ひとつの民族、しかも自国だけでなく他国に住んでいた民族を機械的に「最終処分」する発想というのは、どこから出てくるのか? ヨーロッパに中世から胚胎している反ユダヤ主義の根っこの深さには震撼させられる。

 それゆえに、ホロコーストの問題をヒトラー=ナチスゆえの暴挙というくくりだけで済ませてよいのだろうかとも思うのだ。敗戦により政府が消失してしまったドイツは、非ナチス化を徹底し、過去を清算したとされる。本当か? ユダヤ人虐殺を看過し、ある面で支持していた民族性は問われるべきではないのか? 少なくとも、日本政府は、国家政策として、民族の消失を図ったことなどはない。

 民族浄化という空恐ろしい思想の起源をナチズムにみるのだが、その空恐ろしい思想を後押しする空気こそもまた、恐ろしいのだ。

 ということで、☆☆☆☆。なんとも、中身の濃い新書である。

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