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書評2008◎21

国策で完遂した想像を絶する難工事

 吉村昭「高熱隧道」を読む。黒部渓谷に黒部第三発電所建設のための隧道(=トンネル)を掘削した難工事を活写した記録文学である。

高熱隧道 (新潮文庫) Book 高熱隧道 (新潮文庫)

著者:吉村 昭
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 工事は昭和11年(1936年)着工。人跡未踏の急峻な峡谷の工事のため、まずは機材を運び込む運搬夫らが続々と、谷底に落ちていく。そして、工事が本格すると、そこは岩盤の温度が100度を優に越える高熱地帯。水を浴びながらでも、10分間と作業が出来ない、劣悪至極な環境だった。しかも、この高熱により発破用のダイナマイトが自然発火し、人夫らを吹き飛ばす事故も多発する。

 しかし、越冬しながらの工事が続く。衝撃波が強烈な破壊力を持つ「泡雪崩」に巻き込まれた宿舎が丸ごと吹き飛ばされ、80人以上が行方不明になる事故が発生するにいたって、富山県や警察当局は「工事中止」を打診するも、ダム完成による電力確保は戦争完遂に欠かせぬ国策として、工事は続く。

 自然の猛威の前に立ち尽くす人間と、それを克服しようとする人間の意志がぶつかりあう凄まじさを描いて余りない。さらに、無力な操り人形にしか過ぎない人夫たちが見せる強烈な意思とたくましさの前に、不気味なるエネルギーを感じ取ることもまた、可能である。

 ※いつものことながら報告書のような吉村昭の文体が、冷静ゆえに異様な雰囲気をかもし出している。☆☆☆☆

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