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書評2008⑮

古臭さは否めないが。

 高城高という作家をご存知か? 1955年、東北大学在学中に雑誌「宝石」(=今の「宝石」とは異なる。江戸川乱歩が編集長をしていたミステリ雑誌の懸賞小説に1位入選し、乱歩の絶賛を受けた作家だ。

 その後、北海道新聞記者に。一時は二足の草鞋をはいたものの、記者としての仕事を優先させ、70年以降、作家活動を停止した。日本ハードボイルドの嚆矢とされる「幻の作家」である。2006年暮れに仙台市の出版社から出した短編集「X橋付近」が評判を呼び、昨年の「このミス」ベスト10入りしている。

 この作家、唯一の長編が「墓標なき墓場」だ。根室で起きた船の沈没事件に絡む謎を、新聞記者が追っていく。

 古臭さは禁じえない。作家が意識する、しないにかかわらず、時代はその作品に反映してしまうのだが、文体そのものも古いのだ。そして、新聞記者が探偵役になって事件を解決していくパターンもまた、古い。謎解きもたいしたことない。

墓標なき墓場 (創元推理文庫 M こ 3-1 高城高全集 1)

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著者:高城 高
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 著者が、アメリカのハードボイルド、レイモンド・チャンドラーとかダシール・ハメットを意識しすぎていることが、古臭さの原点のような気がする。当時の時代状況からして、多くのミステリが国内に入ってくることはなく、ミステリの受容はかなり限られたのだろうが、「新しさ」を確立できなかった作家の限界のような気がする。まあ、あと知恵的に評することはたやすいけれども。

 釧路や根室が出てくるから、土地鑑がある人、昭和30年代初めの新聞業界に関心がある人は面白く読めるかもしれない。

 と、いうことで☆☆。ちょっとな。短編集に期待だな。

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