本を読む126
私たちはこのような人たちの末裔であることを誇るべきだ
渡辺京二「逝きし世の面影」を読了した。滋味のある、良い本である。ほぼ2カ月ぐらいかけて、通勤のバスと地下鉄内でじっくりと読んできた。そうやって読まないと、この本の滋味が頭の中に染み出してこないような気がしたからだ。
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逝きし世の面影 (平凡社ライブラリー) 著者:渡辺 京二 |
幕末、維新から明治中期ごろまでにかけて来日した欧米人の目を通して、当時の日本および日本人の生きていた空間を再構築する。600ページにも及ぶ大著だ。
そこに立ち現れてくるのは、底抜けに善意あふれた正確の人々だ。自然と一体化した暮らしを楽しむ農民や、簡素ながらも清潔な身だしなみの庶民の姿も活写されている。
それを欧米人の異国趣味というのはたやすい。しかし、著者自身も認めているのだが、そのような文明は、明治以降の近代化過程で「死滅」してしまったのだ。それゆえにこの本のタイトルがある。「逝きし世」なのだ。もう、二度と取り戻すことのできない文明があった時代なのだ。
素朴ながらも矜持を抱きながら生きた人々の姿に、私は時折、涙を禁じえなかった。このような日本人という民族の末裔であることを、誇るべきだとさえ思う。それは決して、狭小なナショナリズムなどではないことは強調しておくが。
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