本を読む61
見事な青春ミステリ
ミステリの世界でも確実に新しい世代が誕生し、画期的な作品を生み出しているのだなと、目を開かせてくれる。
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春期限定いちごタルト事件 著者:米澤 穂信 |
著者:米澤 穂信 「夏期限定」の方は、「このミス」の2007年版で10位にランクインしている。「春期限定」から始まったこの<小市民>シリーズ、何とも不思議な味わいながらもトータルとして、大きな構造を予感させるミステリである。傑作だと思う。 主人公は2人の高校生、小鳩常悟郎と小佐内ゆき。2人の間には恋愛関係でもなく依存関係でもない「互恵関係」が結ばれている。学園生活では軋轢を避け、<小市民>として安逸な日々を送ることを目的としている2人なのだが、さまざまな日常の中での謎に出会ってしまう。 小鳩はあまりに切れすぎるアタマで、中学時代に「嫌な奴」と思われたことが心の傷になっているらしい。一方のゆきは、小学生のような風貌ながら、ひとたび人から受けた悪意に対しては苛烈に反応する性向を自ら反省しているらしい。 この2人が、当初に出会う「事件」は何とも高校生らしい小ささだ。財布がなくなったとか、おいしいココアをどうやって淹れたかとか(こんなことも「事件」化する才能に注目すべきだね)。しかし、そのうちに無邪気さが消え、どこか不気味な重さに包まれていく。さまざまな仕掛けの中で、物語は進んでいく。短編集ながら、いたるところに仕掛けられた伏線を、あなたはどこまで読み解くことができるかな?
夏期限定トロピカルパフェ事件
販売元:東京創元社
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著者はライトノベル出身。1978年生まれというから、若いよなあ。ウィキペディアなどによると、ライトノベル( Light Novel)とは「小説のカテゴリのひとつで、主に中高生を対象とし、マンガやアニメ風のイラストを用いた娯楽小説である。略語としては、ラノベ、ライノベ。ライトノベル出身で直木賞など権威ある賞を受賞する作家の出現(←桐野夏生のこと)によって今までの概念を突き崩し、大きく広がりを見せている」そうだ。
☆82点⇔可愛い表紙に騙されるな! 悪意の物語だよこれは
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