本を読む56
昔はそんなによくないし、未来はそれほど悪くない
昭和33年。僕の生まれた年です。ここから戦後日本を読むという試み。著者は1947年生まれの団塊世代。商社に勤務し世界各国で働いた後、現在は「日本の国際化への社会貢献」をテーマに大学の非常勤講師などをしているそうです。
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昭和33年 著者:布施 克彦 |
昨年、大ヒットした映画「ALWAYS 三丁目の夕日」。この映画の評価と機を一にして湧き上がっている「昭和30年代は良かった論」に対して、鋭い異論を提起していきます。本当にあのころは良かったのか? 希望に満ち溢れていたのか? 人々は未来を信じていたのか? そして翻って、現在はそんなに絶望的な時代なのか? 当時と現代を比較検討していくと、意外な深層が浮かび上がってくる。
「昔は良かった症候群」の一方で「未来心配性」であるのが、日本人の心性であると著者は指摘する。その背景にある歴史的かつ風土的要因も明らかにし、さらには西洋的時間観、アジア的時間観との相違点を抉り出す。この辺の手法は、アカデミックなものではなく、商社マンとしての著者の社会経験に基づいているのがユニークだ。
さらに、昭和30年代の政治状況や、実在した「真の下流社会」にも言及。メディアの主流が映画からテレビに移行していく過程を、現代のネット企業がテレビ局に食指を伸ばしていく状況とのアナロジーで検証する。
「現代は確実にあのころよりは良くなっているのだ。無意味な郷愁にかられてばかりいてはいけない」。著者のメッセージは要約するとこうなる。「明日を信じろ。そこからしか、明日への活力は生まれない」。こういうことでもある。
読後、何だか元気になった昭和33年生まれである。
☆88点⇔信じよう。とにもかくにも、明日を
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