本を読む44
嫌な気持ちになる読書
そんな体験があってもいい、というのが私の読書論ではある。桐野夏生「ダーク」は、そんな私の持論を裏付ける、読後、嫌な気持ちになる小説である。
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ダーク (上) 著者:桐野 夏生 |
東京・新宿2丁目の女流探偵「ミロ」シリーズの最新作なのだが、ヒロインは大暴れである。義父を殺しに小樽へ飛んだり、ヤクザらに追われて韓国・釜山へ逃げたりと、大忙しだ。殺しにレイプ、シャブと、「悪事」満載である。ドロドロである。
おそらく、桐野夏生、底辺からの光を描こうとしたのだろう。堕ちるとこまで堕ちてこそ見えてくる、幽かな光明。暗い光。犯罪から逆照射されるもの。
救いがないからこそ、救いを求めなくてはならないというパラドックスを描いて巧みな小説である。もはやこれはミステリという狭いジャンルには収まらずに屹立する文学作品である。
☆85点⇔ここまでやるか、と思う。天晴れだよ、桐野夏生。
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