本を読む33
シリーズものの難しさ
一匹狼のキャリア警察官を主人公に据えた大沢在昌の新宿鮫シリーズ。最新刊の「狼花」を読了した。シリーズ9作目だってさ。
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狼花 新宿鮫IX 著者:大沢 在昌 |
評価は難しい。マンネリという批判も、当然出るだろう。一方で、シリーズならではの登場人物のキャラクター立ちに好感を覚える向きもあるだろう。そこがシリーズものの難しさではある。
1990年に始まったころの「新宿鮫」、それはインパクトがあった。外国人犯罪や非合法ドラッグなど、当時の先端を行っていた。でも、すでに時代がそれらを追い越してしまった感がある。だから妙な古臭ささえ覚えてしまう。
登場人物はそれぞれ、魅力的だ。それぞれが十分にキャラ立ちしており、十分に主役級を張れる。リーダービリティーも抜群だ。分厚いページを、次々にめくらせていく、小気味よいストーリー展開は快感だ。これらが作家の成熟というか、熟練ということなんだろう。
だが、しかし、なあ。「あの新宿鮫の現在がこれかよ!」という食い足りなさだ。正直、物足りない。外国人犯罪を憎むあまりに「一線」を超えようとする高級警察官僚の掲げる正義にも、なんだか興醒めしてしまう。違うんだよなあ、これは、新宿鮫じゃないよ、と言いたくなってしまうのだ。
☆70点⇔時の流れには抗うことができないのか、新宿鮫も
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