最近のトラックバック

無料ブログはココログ

« 本を読む35 | トップページ | 昼食問題37 »

本を読む36

自らの無知を知る

 世代のせいなのかどうかは知らないが、教養主義的なところがあると思う。世界文学・日本文学の主な作品はほぼ、読破してきた自負があるのだが、中味はすべて忘れてしまっているのだから、いい加減なものでもあるが。

 そんなかつての「文学少年」にとって丸谷才一、鹿島茂、三浦雅士の3人による鼎談「文学全集を立ちあげる」は何とも楽しい本だ。

 世界篇・日本篇合わせて300巻の文学全集を2006年的見地から編集しなおす試み。どこまでボケているのか、本気なのかわからない揺らぎが、何ともたまらない。

 「芥川はもはや、全集にはいらない」「谷崎は3巻」なんていうやりとりがぺダンチックでいいです。「SF集」「スパイ小説集」「猥褻小説集」などという別巻を立てたりする試みも斬新だ。

 それにしても、通読して、まったく未読の小説(戯曲や詩、短歌や俳句、評論も含めて)がいかに多いことか。まさしく「人生は短し、芸術は長し」だ。自らの無知を知らしめてくれる一冊だ。

 正直、リタイア後は「源氏物語」から吉行淳之介、さらには村上春樹まで、読み続けていたいと切望する。

 閑話休題。 ひとつ気になること。私自身、この「立ちあげる」という言い方がどうも苦手なんです。最近、頻出する表現ですよね。でも、異和感があるなあ。どうもパソコン用語の「スタートアップ」を直訳したようでね。丸谷たち、文学者がこのタイトルに異論を唱えなかったのが不思議な感じもする。皆さん、どう思いますか?

文学全集を立ちあげる Book 文学全集を立ちあげる

著者:丸谷 才一,三浦 雅士,鹿島 茂
販売元:文藝春秋
Amazon.co.jpで詳細を確認する

☆85点⇔知的好奇心を満たしてくれる本です

« 本を読む35 | トップページ | 昼食問題37 »

書籍・雑誌」カテゴリの記事

コメント

この年代の人たちが、あえて「立ち上げる」という言葉を使うと、戦闘的な感じがします。

>網さん、久しぶり
そうだよね。何か「魂胆」があるような気がする。
「立ち上がる」なら自動詞で完結するのですが
「立ち上げる」だと目的語が必要となる。
この場合は「文学全集」のわけですが、何かヘンですよね。
「編集する」「編む」ではインパクトに欠けるのは否めませんが。
「立ち上げる」は団塊世代が意図的に流布してきた言葉なのだろうか?

へへ。お久しぶりです。
ハム優勝で、巷は盛り上がってますか?

意図的に流布してきた、というのはないと思うんですが、このタイトルに込めた反語的な「魂胆」ならありそうですよね。

16年前、ソフト会社で働き始めた当時は、「立ち上げる」って、単に「PCの電源を入れる」という意味でした。
だから、プログラムを「走らせる」という言い方同様、仕事で使う言葉、または概念として、すんなり入ってきましたけど、何と言うか、目的語をさまざまに入れ換えることによって、汎用性がぐんと高くなって、いつの間にやら何でもかんでも「立ち上げる」ようになっちゃいましたね。

多分、「~する」に似た、便利な言葉なんですよね。

時期的には、急に増え始めた「カタカナ語」の目的語を当てるのには、とっても便利。
PCの普及と共に、翻訳しにくい言葉が増えた時期でもあるし、英語も必ずしも日本語に直さなくてもよい、という認識が、広まり始めたタイミングでもあるように思います。

その風潮に乗ったのか、それとも、偏差値の高い人々が集まるところなので、そうした風潮の御先棒を担いだのかはわかりませんが、お上も、英語をカタカナに直してそのまま使いましたよね。

それは怠惰だと思うけど、そんなことをみんなして平気でやってたんだから、仕方ないような気もします。
団塊がこの言葉の流布に加担したとしたら、「意図的に」というよりは、むしろ怠惰の結果であるように思うのです。

「プロジェクトを立ち上げる」なんて、初期型の使い方という感じですが、この用法が、面倒な言いまわしの多い日本語に適用されるのに、そう時間はかからなかった、ってことじゃないでしょうか?

>網さんへ
「名前」ありませんが網さんですよね?

「立ちあげる」問題ですが、一部の国語学者には「立ち」が自動詞なのに、「あげる」という他動詞と隣接させることへの違和感を指摘する向きもあるようですね。
「立つ」主体と、「あげる」目的語が異なっているので、なんとなく居心地の悪さを覚える人がいるのかもしれません。
いずれにせよ、「立ちあげる」を頻出させている文章には用心したほうがいいかもしれません。

あれ?何で名前が落ちちゃったんでしょう。
ハイ、確かにわたしの書いたものです。

国語学者は、「立て上げる」なら違和感がないのかな。

やはり、自動詞としての「立ち上がる」が一般的なのでしょうかね。
「私は企業を立て上げた」・・・。おかしいね。

この記事へのコメントは終了しました。

トラックバック


この記事へのトラックバック一覧です: 本を読む36:

« 本を読む35 | トップページ | 昼食問題37 »

2022年3月
    1 2 3 4 5
6 7 8 9 10 11 12
13 14 15 16 17 18 19
20 21 22 23 24 25 26
27 28 29 30 31