本を読む37
本物のノアール、本物のミステリ
さすが、と思わせる貫禄。暗黒小説(ノアール)の第一人者、「アメリカ文学界の狂犬」こと、ジェイムズ・エルロイの強烈な新作。凡百の自称「ミステリ」を吹き飛ばしてしまう。
獣どもの街 著者:ジェイムズ エルロイ |
主人公はハリウッド署の刑事リック。映画の撮影中に殺人事件に遭遇した女優ドナを護衛しながら、犯人に迫っていく「ハリウッドのファック小屋」(←凄いタイトルだね)など、1980年代から21世紀の現代までを貫く犯罪クロニクル3編を収める。21世紀になると、刑事がは異常殺人者だけでなく、イスラム原理主義者も相手にしなければならない。
拷問などは朝飯前。警察組織そのものが腐敗していて、何があっても不思議じゃない。射殺した男の手に拳銃を握らせておけば、罪を問われることもない。行間から血と汗と精液の匂いが充満する。死臭が漂う。けれども、一度その匂いをかいでしまったら、抜けられない。エルロイの構築する悪夢のような世界からは。
非常に凝った文体で、訳者は苦労したと思う。どんなものかは読んでもらうしかないけれど。その文体が、三流の叙事詩のような雰囲気をかもし出して、犯罪小説にぴったりなのだ。
☆89点⇔文体に酔った。効いた。傑作だ。
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