本を読む⑬
「春樹」臭くないか
このブログでも「終末のフール」を絶賛した伊坂幸太郎の「重力ピエロ」が新潮文庫に入ったのを機に読んでみました。エラソーにいうなら、悪くはないと思う。いや、突出している部分もある。でも、少々、気になる点もありました。 著者:伊坂 幸太郎
重力ピエロ
販売元:新潮社
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父親が違う兄弟が、仙台市内で連続する放火事件に立ち向かう、というのがベーシックなストーリー。そこに、家族そのもののあり方や遺伝子問題、グラフィックアート(要は街中の落書きだ)などがからみ、大団円を迎える。
意欲的な作品だと思う。でも、なんというか、作りすぎだ。書き込み過ぎたきらいは否めないのではないか。
そして、非常に鼻についてしまったのが文体的に「村上春樹を意識しすぎてないか」ということだった。比喩などが「春樹」なんだよなあ。この伊坂世代に、村上春樹は多大な影響を与えているのではないだろうか。深刻なほどに。
その「春樹」臭さが、「終末のフール」にはあまり感じられなかったから、ひと時の麻疹(はしか)のようなものだったのか?
この作家、本当にまじめに小説世界と格闘している。つまり、現実と格闘しようとしている。その結果としての作品が、どこまで自らのものとして結実するのかはわからない。でも、私は応援していく。本を購入するという行為によって。もはや、我が感性ではこのタイトルとしての「重力ピエロ」の比喩なんて思いもつかないものな。
☆78点⇔うーん。もうひとつなんだよ。
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